「『ち』ありますか?」
私が受けたわけではない。おさやスタッフのSさんが、電話で
「ち?ち?ちぃ?」とか、なんか、連発しているのを横で聞いた訳である。
「ち」・・・・・
知らないうちに、わしもこの業界に入って25年である。
たぶん、この25年の間で2回目の「ち」の問い合わせである。
残念なことであるが、思い出せない。
なんとなく、足袋のコハゼの受け側の糸部分。
あんなようなものが浮かんできた。
不思議なものである。
憶えているわけではないが、なんとなく浮かんできたわけである。
「これかなぁ?」確信はない。
ところが、これが電話では伝わらない。
「一度見に来てください」
となる。
結局

これであった。
真ん中抜けているのは、お買い上げいただいた白の場所である。
だいたいこれを買いにくる人は、指で楕円を描きながら
「ボタンとおす、ひもみたいな、こんな(ここで楕円)格好のやつ」
「呼び方しらんでいかんけど、こんな(ここでさらに楕円)やつ」
となって、
「これかなぁ?」
となって
「そうそう」
となる。
ここで、
「『ち』ですか?」ときいても、お客さんにはチンプンだとおもう。
となると、流通していない言葉「ち」って何となる。
物はそこそこ(けっしてよく売れているわけではない)流通しているのに、ことばは、流通していない。
物の需要に対して、言葉の需要が低い。
死語というか、専門用語ってことかな?
和裁とか着物業界さんでは、普通に使われているのかしら?